見どころHighlight

アメリカのメジャー誌TIMEが、スポーツや映画、芸術など様々なジャンルにおいて2008年度のトップ10を選出したが、TV作品部門において並み居る強敵を打ち負かして『ザ・シールド』がベスト1に選ばれた。また、ベストエピソード部門においても第7シーズンの最終話が第2位に選ばれている。
また、「Entertainment Weekly」誌においても2008年度TV番組の第4位に選出され、『ザ・シールド』の終了を「ひとつの時代が終わった」とも評されている。

ザ・シールド』を製作したケーブルTV局FX社の現社長ジョン・ランドグラフは作品について「スポンサーによるコマーシャルによって作られているドラマというのはどうしても抑制がかかってしまう。芸術的な映画ということならHBOなども製作していたが、『ザ・シールド』のようなアンモラルなTVシリーズは誰も自分のキャリアが傷つくのを恐れてやりたがらなかった。しかし、当時のFXの社長のピーター・リグオリとFXエンターティメントの社長ケビン・ライルはあえてこの作品を制作した。この作品によって、ケーブル局で次々とアンモラルな名作が作られるようになったんだ。」と語っている。

ザ・シールド』の製作総指揮者であるショーン・ライアンはすっかり売れっ子となり、『ザ・シールド』と平行して製作した『ザ・ユニット』もヒットを記録。さらにその実力を認められ、最近では『ターミネイター4』の脚本家として、アカデミーを受賞したポール・ハギスなどと共にクレジットされている。

ショーン・ライアンは『ザ・シールド』が作品として成功した秘訣として自分を始めとする初期のスタッフが最後まで作品に関わったせいだと言う。「多くの作品が後半からパワーを失って腰砕けになっておくだろう。それは最初の製作者が(忙しさなどから)作品から手を離すせいなんだ。例えば『ザ・ホワイトハウス』などもクリエイターのアラン・ソーキンがシリーズから離脱したとたんにパワーを失っただろう。」

ショーン・ライアンがクライマックス向かって力を入れたキャラクターがマッキー刑事の元相棒のシェーンである。「シェーンはヴィックが作り上げた一種のフランケンシュタイン刑事なんだ。ところがシェーンはヴィックの悪い面だけを受け継ぎ、彼の良きところ、例えば不屈の精神力などを持ち合わせていなかったために悲劇へと追い込まれてしまったんだ。」最終話のシェーンの動向はまさに傑作として高く評価されているので、ぜひ行く末をその目で確かめてほしい。

マッキー役のマイケル・チクリス出演映画では『ファンタスティック・フォー』のベン・グリム役が有名であるが、最近では『ブラッド』の刑事役や、『イーグル・アイ』での国務長官役などでもその勇姿を目にすることが多い。一番の変化球はアメリカで放映中の人形アニメ『ロボット・チキン』にヴィック・マッキー刑事役でゲスト出演したことだろうか。
レム役のケネス・ジョンソンは“善なるマッキー”ともいうべき愛すべき巨漢であるが、第5シーズンで番組を離れた後は『CSI:科学捜査班』などにゲスト出演し、『コールドケース』では主人公のリリー・ラッシュの新恋人として出演している。

中盤から大きな比重を持って描かれるのがアルメニアギャングである。では、アルメニアギャングというのは何者なのか?アルメニア本国はヨーロッパの東というよりも、むしろ西アジアに近接する国でトルコとアゼルバイジャン、グルジア、イランに接している。このために昔から様々な国の侵略を受けてきた歴史がある。20世紀初頭にはトルコとの紛争によって戦禍に巻き込まれ、これから逃れるために多数の住民がロシアや東欧、そしてアメリカに移住した。この時の移民の子孫がニューヨークやカリフォルニアに今も多数住んでいるが、外見がアラブ風であるために、様々な迫害を受けているのも事実である。
一方、エルサルバドルは中央アメリカの小国で人口密度の高い貧しい国である。社会や生活の多くをアメリカに依存していて、2002年からは国の通貨がアメリカドルとなっているほどである。 これらの国の出身者に加えて黒人やメキシコ人などが互いにけん制しあいながら社会を形成していくうえでそれぞれが身を守るためにギャング組織を作っていったと言える。

ヴィックの娘キャシディ・マッキーを演じているオータム・チクリスはその名の通り、ヴィック役のマイケル・チクリスの実の娘である。1993年生まれの彼女はシーズン5撮影時には12歳。マイケル・チクリスがカナダで「ザ・コミッシュ」(91)の撮影中に生まれた。

シーズン5で圧倒的な存在感でヴィックと対決したフォレスト・ウィテカーは1988年に「バード」でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞した名優であるが、「ザ・シールド」シーズン5放送後に公開されたイギリス映画「ラストキング・オブ・スコットランド」(06)でアミン大統領を演じて2006年度のアカデミー主演男優賞を受賞した。主人公を翻弄するエキセントリックで憎憎しいけれども、どこか人を引きつける魅力的な人物象はキャバナーに通じるところがある。

ヴィック・マッキー役のマイケル・チクリスはこれまでシーズン3の「抗争の火種」とシーズン5の「逆襲」を監督している。特に「逆襲」はキャバナーによる尋問シーンなどのように比較的動きの少ない室内劇に重点が置かれた力作であるが、実はこのような作品ほど演出の力量が試されるのである。チクリスはシーズン6でも演出を担当しているので、これも楽しみである。

シーズン5で遂にクローデッドの病気が明かされる。翻訳では判り易いように"膠原病"と説明されていたが、原語では"ループス"と呼ばれていた。膠原病というのは全身の組織が様々な形で侵食される慢性の炎症性の病気の総称で、ループスはその中の一つ。正確には"Systemic Lupus Erythematosis"といい、略称でSLEと呼ばれる。女性に多く発症して、皮膚の症状と関節炎が主症状で時に腎臓がやられたりする。免疫抑制剤やステロイド剤(ダッチがコリーンに聞いていた"プレドニン"というのがこれ)で症状を抑えることが出来、実際にクローデットは15年前から様々な苦痛と闘ってきたと語られている。しかし、この病気は急激に悪化することもあり、油断することはできない。今後、クローデットのこの病気が物語にどのような影響を与えるのかも見逃せない伏線の一つである。

キャバナーの妻役で精神を病みながらも、美貌と大胆な行動で強烈な印象を残すセイディを演じるのはジーナ・トレス。これまでにも「ニキータ」(97~01)「24」(01~)「CIA:ザ・エージェンシー」(01~03)や、特に「エイリアス」(01~06)でのシドニーのライバル役アンナ・エスピノーサなどでAXN作品ではおなじみの顔であるが、実生活では「マトリックス」(99~03)のモーフィアス役などで有名なローレンス・フィッシュバーンの細君でもある。キャバナーやヴィックを圧倒するのもうなずける。

ショーン・ライアンと共に製作総指揮を担当するスコット・ブラジルは、あの名作「ヒルストリート・ブルース」(81~87)の製作者の一人でもある。ヴィックが繰り広げるハードな捜査の合間に署内で起こる"自動販売機の故障"や"更衣室の盗撮事件"などの出来事や、臨時署長に任命されて有頂天になったものの、その実は雑用係というリビング刑事のくだりなどのユーモラスな雰囲気は確かに「ヒルストリート・ブルース」(81~87)を彷彿させる。

ザ・シールド」の舞台となるロサンゼルスの下町ファーミントン地区は架空の町である。これまでエド・マクベインが「87分署シリーズ」(95~97)で舞台とした"アイソラ"や、スティーブン・ボチコが「ヒルストリート・ブルース」(81~87)で描いた"ヒルストリート"のように、架空の土地を設定して事件を起こすドラマは数多くあるが、大抵はモデルとなった土地を類推することが出来、さらにそのモデルとなった都市の特徴を実際以上に表現するためのことが多い。例えば冬の寒さが厳しいアイソラはニューヨークであり、高架電車が走り、貧困な白人と黒人とヒスパニックが雑居するヒルストリートはシカゴがモデルとなっている。ファーミントンの所在はビバリーヒルズやハリウッドを持つ華やかなロサンゼルスであるが、明らかに黒人とヒスパニック住民が多数を占める、いわゆる陽光溢れた観光地とは遥かに離れた下町を舞台にすることで、差別と貧困に満ちたアメリカのもう一つの過酷な現実の面を描写しているのである。

ヴィック・マッキーの妻のコリーンを演じるキャシー・カーリン・ライアンは「ザ・シールド」の産みの親であり、製作総指揮を担当するショーン・ライアンの実生活の妻でもある。実は彼女はシーズン1放映時には妊娠していた。

ショーン・ライアンが最初に設定したキャラクター配置ではクローデットに該当するキャラクターは男性だった。CCH・パウンダーのエージェントの推薦もあって彼女がクローデット役にキャスティングされたが、ショーン・ライアンは彼女のセリフや担当する事件の内容は男性キャラクターのままで通した。もちろんこれはCCH・パウンダー自身の願いもあってのことである。

毎回シーズンの最初に俳優達には実際の警察官による拳銃や逮捕術の講習が行われる。さらに、各エピソードには撮影時に実際の警官が監修に加わっている。ヴィック・マッキーが所持している拳銃はスミス&ウェッソンのセミ・オートマチックである。

ショーン・ライアンが「ザ・シールド」という作品に最初に考えていたタイトルは"The Barn"(納屋)というタイトルだった。しかし園芸番組で同じタイトルの番組があることから変更を余儀なくされる。次に仮につけられたタイトルが"Rampart"であったが、これは実在のロサンゼルスのランパートディヴィジョンの名前そのままであるためにスキャンダラスな問題になることを考慮して、最終的に現在の「ザ・シールド」というタイトルに決定した。

アメリカのネット(一般放送)ではTVコードの関係で、暴力や裸のシーンは厳しく規制されている。しかし、ケーブル局などはこのコードに抵触しないために、ドラマ性を盛り上げるために過激なシーンが平気で描写されることが多い。その代表がHBO局の「ソプラノズ」(99~)や「SEX AND THE CITY」(98~04)であるが、FXエンターテイメント社はケーブル局としては後発のためにヒット番組を持たなかった。しかし、起死回生のために、ショーン・ライアンに全てを任せた「ザ・シールド」によってたちまちケーブル局のなかでも人気局となったのである。

シーズン3から製作スタッフに参加したチャールズ・H・エグリー。彼はこれまでブルース・ウィリスの「こちらブルームーン探偵社」(85~89)や「NYPDブルー」(93~05)などに参加してきたが、人間ドラマを得意とするということで盟友のジェームズ・キャメロンに招かれて「ダーク・エンジェル」(00~02)の製作総指揮を担当した。「ザ・シールド」でも、シーズン3からはコンサルティング・プロデューサーとして本格的にストーリーに関与するようになり、シーズン4からは製作総指揮の一員に加わった。彼の参画でますます人間ドラマの機微は磨かれて行くのだ。

シーズン4を迎えた「ザ・シールド」でアメリカ人が驚いたのはグレン・クローズの参加である。「ガープの世界」(82)「危険な関係」(88)「危険な情事」(87)「101」(96)「エアフォース・ワン」(97)などスクリーンや演劇界で大活躍し、5度のアカデミー賞ノミネート、3度のトニー賞受賞などの輝かしい栄光に包まれた名優の彼女がなんとマイケル・チクリスの向こうをはってギャング団と戦う女刑事モニカ・ローリングとなって登場するのである。

この出演についてグレン・クローズは「私は良いシナリオや情熱を持ったクリエイターには弱いの」と出演を快諾した経緯を語っている。「FXの社長と会長のジョン・ランドクリフ、それとCEOのピーター・リグオリとショーン・ライアンなどが(首脳部総出でNYにやって来て私を説得したのよ)「実は「ガープの世界」に出た後で「デューン」(映画版)などの大作映画の依頼があったけれども、どれも悲鳴をあげて逃げまどうような役ばかりだったわ。でも、私がやりたいのはタフで真っ先に誰よりも前に飛び出して行く女だったの」「この役はとってもタフで気に入っているわ」

同じく新参加の一風変わったキャストとして、ファーミントンの下町で元犯罪者でありながら地区のリーダー役としてヴィック、ローリングなどと対立する新キャラクターとしてアントン・ミッチェルが登場するが、彼に扮するのは「バーバー・ショップ」(02)などの作品で大人気を誇るアンソニー・アンダーソンである。また、ヒップホップ歌手でアンドレ3000と呼ばれるアンドレ・ベンジャミンも俗悪コミックショップのオーナー役でゲスト出演している。

2005年の7月にアメリカで公開されて興収一位の大ヒットを記録した「ファンタスティック・フォー/超能力ユニット」。アメリカでは40年以上連載が続いている大人気キャラクターだけに、製作陣は主人公四人の人選に苦労したそうである。根強いファンが多いだけにキャスティングされた俳優のイメージが原作と異なるとファン・サイトなどから一斉にブーイングが起こるのだが、ベン・グリム(ザ・シング)役にマイケル・チクリスがキャスティングされた時には絶賛を持って迎えられた。面白いのは全身を岩石状のメーキャップをしながらも、表情は可能な限りマイケル・チクリスそのものを利用したことで、おかげで実に表情豊かでタフな岩石男が出来上がった。ちなみに、ユニットの一人インビジブル・ウーマンを演じているのは「ダーク・エンジェル」のジェシカ・アルバである。

文/ 松岡 秀治

Twitter


衛星放送協会 社会貢献キャンペーン アナログ多チャンネルをケーブルテレビでご覧の方へ 今が加入のチャンス>WEB割実施中!スカパーe2 AXNみるならひかりTV 海外ドラマをもりあげよう 不正コピー防止
株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント ソニー株式会社 ソニーのポイントプログラム