AXN的エミー賞大予想
7月8日に発表されたエミー賞のノミネートを受けて、海外ドラマに精通した方々およびAXNが、主要各部門の受賞作品・俳優を大胆に大予想!

予想者:Meg Mimura
テレビ評論家。幼い頃から現実逃避の手段としてテレビにかじりついていた。青春ドラマと私立探偵モノで観たアメリカに憧れて、高校生でアメリカ留学を果たし、パイオニア精神を叩き込まれる。大学卒業後、合弁製薬会社2社で翻訳、通訳、重役秘書、病院製品コーディネーターを経た後、羽ばたく機会を求めて、サンディエゴに移住。州立大学でテレビ/映画について勉強し、修士号を取得したが、卒業後はビジネス・コンサルタントとしてバイオテク業界で生計を立てた。 2000年離婚を機に、本来の夢を実現しようとLAに。カリフォルニア在住の日本人に面白いテレビ番組を紹介して好評を博したため、三度の食事より好きなテレビへの熱い想いを伝えようと、テレビ評論家への道を切り開いた。テレビ評論家協会(TCA)会員として年2回開催されるPress Tour(新番組の内覧会)に参加する唯一の日本人。また、米国テレビ芸術科学アカデミー(ATAS)会員として、番組制作の裏話を聞く機会も多く、TV のメッカで肌で感じたことを報道。映画「Price for Peace」「SAYURI」「硫黄島からの手紙」にテクニカル・アドバイザーとして関与した他、Variety Japanのコラム連載、05年よりLAの雑誌「Lighthouse」にコラム連載、「アエラ」「English Journal」「TVFan」「海外TVドラマファイル」などに投稿。エミー賞第二次選考委員を務めた07年以来、エミー賞授賞式にも参加。タレントの映像インタビューは今年で4年目になるが、アメリカのテレビ業界についての講演やパネルディスカッションの企画も手がける。第63回エミー賞候補に挙った作品や俳優を見て、今年はうーんと唸ってしまった。5シーズンに渡り、私が肩入れしていた「Friday Night Lights」が作品賞、主演男優賞、主演女優賞のカテゴリーにノミネートされており、持ち馬が出るレースを占うかの如く、否が応でも私感が入ってしまうのだ。この作品が日本で放送される可能性は低いが、評論家の間では「愛娘」のような作品である。それが証拠に8月6日に開催されたテレビ評論家協会(Television Critics Association)のTCA賞授賞式で、「2011年最優秀作品」として表彰され、有終の美を飾った。それで良しとするべきなのだが....やはり、エミー賞という最高の「勲章」を手にして欲しいと願う親心なのだ。 毎年、様々な要因を考慮して、分析に分析を重ねて受賞作/俳優を予想しても、米国テレビ芸術科学アカデミー(ATAS)会員には、毎年のように足をすくわれてきた。従って例年とは趣向を変えて、今年は下馬評の高い作品や俳優を挙げると同時に、夜も日も明けずテレビを観ている私の希望的観測も加えることにした。
<作品賞>
本命「マッドメン」
対抗馬「ボードウォーク・エンパイア」「グッド・ワイフ」
穴馬「Friday Night Lights」
昨年と同じくケーブル局から「MAD MENマッドメン」「デクスター ~警察官は殺人鬼」の常連2本に、HBOの新作「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」と「Game of Thrones」が候補にあがった。地上波局からは、ノミネーション2回目の大人の鑑賞に堪える「グッド・ワイフ」と7月にNBCで完了した家族ドラマ「Friday Night Lights」の2本だ。「マッドメン」シーズン4で、暗い過去を引きずった主人公ドン・ドレイパー(ジョン・ハム)が遂に「地」をさらけだし、ファンは一番盛り上がったシーズンと絶賛している上、ATAS会員は一旦「これっ!」と決めると何年も連続投票する「惰性癖」があるので、四連覇を果たすであろう。但し、ブランド志向が勝てば、映画界の巨匠スコセッシがパイロットの逸話監督を務めて、番組のカラーを設定した「ボードウォーク・エンパイア」に票が集まるに違いない。去年、本命と信じていた「グッド・ワイフ」は、どこまで迫れるか?
私は、「Friday Night Lights」がエミー賞に輝くことを祈っているが、TCA会員ほど本作を吟味しこよなく愛したATAS会員は少ないので、票は期待できない。今年こそ、「流石にテレビのプロ!」と感心させてくれないか?
<主演男優賞>
本命 ヒュー・ローリー(「Dr.HOUSE」)
対抗馬 スティーヴ・ブシェミ(「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」)、ジョン・ハム(MAD MEN マッドメン)
穴馬 カイル・チャンドラー(「Friday Night Lights」)
去年もこのカテゴリー候補に挙がった4人、カイル・チャンドラー(ノミネーション2回目)、マイケル・C・ホール(4回目)、ジョン・ハム(4回目)、ヒュー・ローリー(6回目)に、スティーヴ・ブシェミとティモシー・オリファントが新たに加わった。ハムの演技が今年こそ認められると確信する人も多いが、ノミネーション5回目にして漸くエミーを手にしたキラ・セジウィック(「クローザー」)の例もあるので、ローリーのどんでん返しだって充分あり得るのだ。ローリーの提出した逸話を観れば、ハムとの実力の格差は明らかである。偏屈親父ハウスの役柄がATAS会員に受けないという理屈なら、自堕落で身勝手なドレイパーこそ女性票を得られないのではないだろうか?
ブランド志向が勝てば、常連を差し置いて助演や監督カテゴリー候補歴3回のブシェミがかっさらって行く可能性もある。私は飽くまで、最後のチャンスなのでチャンドラーに受賞して欲しいが、「これっきりだから」的配慮は一切なされないし、シリーズを通しで観たファンしかチャンドラーが演じたアメフトコーチの旅を正当に評価できないかもしれない。
<主演女優賞>
本命 キャシー・ベイツ (「Harry's Law」)
対抗馬 ジュリアナ・マーグリーズ(「グッド・ワイフ」)
穴馬 コニー・ブリットン(「Friday Night Lights」)
このカテゴリーも接戦が予想される。キャシー・ベイツとミレイユ・イーノス以外は、本カテゴリー候補暦2回目のコニー・ブリットン、ジュリアナ・マーグリーズ、エリザベス・モスの3人対、1勝6敗で今年のノミネーションが8回目のマリスカ・ハージティの大ベテランだ。昨年、必勝と下馬評の高かったマーグリーズが負け、セジウィックがエミー賞に輝いたので、今年はマーグリーズの番と信じている人が多いが....ベイツという演技派のベテラン女優の存在を忘れてはならない。しかも、デビッド・E・ケリーの台詞を口にして、主演男優賞を3回受賞したジェームス・スペーダー(「ボストン・リーガル」)と同じく、ベイツは「Harry’s Law」で心に染みる名台詞を披露したし、映画界から天下りして初のテレビシリーズ主演だけに、マーグリーズは今年も涙を呑む結果になるかもしれない。ベイツの提出した逸話「Innocent Man」は、何度観てもじーんと来るのに対して、マーグリーズの「In Sickness」はもう一つインパクトに欠ける。個人的には、夫と平等に夢を実現する強い女を演じたブリットンに獲得して欲しいが、最終話「Always」のみで評価するATAS会員には、衝撃度が低いかもしれない。
<助演男優賞>
本命 アラン・カミング(「グッド・ワイフ」)
対抗馬 アンドレ・ブラウアー(「Men Of A Certain Age」)
穴馬 ウォルトン・ゴギンズ( 「Justified」)
毎年、予想が最も困難な助演カテゴリーなので、主役を喰わず、作品に「味」を添えることに長けた俳優を選ぼう。「グッド・ワイフ」シーズン2で、選挙運動イメージコンサルタントのイーライ・ゴールドとして活躍が目覚ましかったカミングの勝ちと読んでいる。カミングが提出した「Silver Bullet」は、同作品から2年連続助演女優賞候補に挙がったダイアン・ロックハート役クリスティーン・バランスキーと同様、仕事に生きる中年男女の「鬼の霍乱」をユーモアたっぷりに描いた逸話で、二人の芸域の広さを証明した。
カミングに匹敵するのは、2勝6敗、助演カテゴリーは今年で2回目のブラウアー。「Men of a Certain Age」は打ち切られたが、蒼々たる経歴の持ち主=演技派なので、今年こそ名誉挽回するかもしれない。穴馬は、アカデミー賞受賞作を制作/主演したゴギンズ。映画界での知名度が、ATAS会員にどこまでブランドとして通用するかが鍵と言える。
<助演女優賞>
本命 マーゴ・マーティンデイル( 「Justified」)
対抗馬 クリスティーン・バランスキー(「グッド・ワイフ」)
穴馬 ミシェル・フォーブス(「The Killing」)
昨年、ベテラン女優シャロン・グレスとバランスキーを差し置いて、助演女優賞を獲得したのは「グッド・ワイフ」の新人パンジャビ!「謎のタフな女」の醜い過去が暴かれ、慌てて職場から逃避しようとする逸話「Getting Off」を提出したのは妥当だが、シーズン1の鮮度は落ちた感がある。2連覇は叶わないだろう。
本命は「脇役の女王」と言っても過言ではないマーティンデイルと思われる。何しろ、出演した映画は「ザ・ファーム 法律事務所」「ミリオンダラー・ベイビー」、テレビは「デクスター 」「ミディアム」など、膨大な数。「Justified」での女傑役の迫力たるや、エミー賞に充分値する演技だった。
ドラマ部門の助演女優賞候補に挙がるのは二度目だが、コメディー部門では助演とゲスト出演でノミネーション6回、95年に助演女優賞を手にしたベテラン女優バランスキー。舞台でも名を馳せた女優なので、演技力はマーティンデイルと同等。仕事に生きる「デキる女」ダイアンが恋に溺れそうになる様子を「Silver Bullet」で見事に演じているバランスキーに獲得して欲しいものだ。
「Killing」のパイロットを提出したフォーブスの楚々とした演技が意外と受けるかもしれない?
救いは、今年司会進行役に選ばれたジェーン・リンチが「テレビ大好き人間」と宣言し、「とにかく楽しい授賞式にしてみせるわ!」と意欲満々なこと。テレビを観ないATAS会員が選んだ受賞者を、テレビが大好きなリンチがお披露目するとは皮肉なことだ。

















