ブラッカイマーのTVドラマが、いずれも映画に負けないクオリティを持っているのは“CSI:”3部作や、「コールドケース」のファンなら既にご存知のはず。映像とサウンド、いずれもハリウッド映画に劣らない品質なのは広く知られている。
但し、この「CHASE/逃亡者を追え!」に関して過去のブラッカイマー作品で最も近いのは、FBI・NY支局の失踪者捜索班を描いたTV「WITHOUT A TRACE/FBI 失踪者を追え!」だろうし、ヒロインが活躍する点では「コールドケース」にも近い。そして犯人追跡にあってプロファイリングを重視するというリアリズムが説得力を生んでいる点で、“CSI:”3部作にも近い。
とはいえ、アクションも重視し、ヒロインと仲間たちが全米各地をスピーディにめぐる展開は、ブラッカイマーが製作してエミー賞のリアリティ・ショー部門で常連になった「アメージング・レース」のようでもあって興味深い。目に焼きつくようなビジュアルとそれをさらに高めるスピード感がブラッカイマーのトレードマークだ。はまるといつしか見るのが止まらなくなる、ブラッカイマー印はここでも健在である。なお、武装した警官(連邦保安官)&SWATによる突入シーンというブラッカイマー作品名物の見せ場も「CHASE~」はふんだんだ。
ジェリー・ブラッカイマーは米国の映画&TV史上最も成功したプロデューサーの1人だ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなど、プロデュースした映画が全世界の劇場で稼いだ興行収入は日本円にして合計1兆円を超え、TV界でも「CSI:科学捜査班」「CSI:マイアミ」「CSI:ニューヨーク」などの“CSI:”3部作や「コールドケース」などのヒット作を放っている。
映画やTVのプロデューサーというとどんな仕事をしているのか、見えにくいことが多いが、まず言えるのは、ブラッカイマーが自分のアンテナに引っかかった将来性豊かな企画に対し、過去の自分の実績を担保にして資金を集められるだけ集め、それを可能なかぎりマンパワーに注いでいるということ。そんなブラッカイマーが満を持して放った最新ドラマ「CHASE/逃亡者を追え!」には、そのエンターテインメント哲学があちらこちらによく反映されている。検証してみよう。

第1話、凶悪犯によってつらい目に遭わされた少女になり代わり、ヒロインのアニー(ケリー・ギデッシュ)が犯人を無心に追い詰めていく「CHASE/逃亡者を追え!」。戦う女性というのは、「トップガン」「ザ・ロック」「アルマゲドン」など、男っぽさが際立つ映画を得意としてきたブラッカイマーの、実は意外なもう1つのライフワーク。
初期のブラッカイマー映画「フラッシュダンス」は、昼夜を問わずがんばるダンサー志望のヒロイン、アレックス(ジェニファー・ビールス)の物語だったし、「デンジャラス・マインド/卒業の日まで」のヒロイン役ミシェル・ファイファーも、「CSI:科学捜査班」の“戦うシングルマザー”キャサリン(マーグ・ヘルゲンバーガー)も、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでキーラ・ナイトレイが演じたエリザベスも、いずれも戦うヒロインだった。働くシングルマザーでもあるアニーはやはり、「~科学捜査班」のキャサリンも似ているし、「コールドケース」のリリー(キャスリン・モリス)の行動派版を思わせ、つい応援したくなってしまう。
先だって述べた通り、優れたスタッフやキャストに対する目利きこそブラッカイマーの真骨頂だ。「CHASE/逃亡者を追え!」第1話は、「ダーク・エンジェル」「ヤング・スーパーマン」「WITHOUT A TRACE/FBI失踪者を追え!」「ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ」などのヒット・ドラマで第1話を演出し、各作品のスタイル構築に貢献してきたデイヴィッド・ナッターを監督に迎え、手堅く発進。
ヒロインのアニー役のケリー・ギデッシュは、ソープオペラ(いわゆるTVの昼メロ)出身で、華やかなルックスながら体当たりの熱演を披露。そんなギデッシュの抜擢に、ヒット・ドラマ「プリズン・ブレイク」でスクレを演じたアマウリー・ノラスコ(マルコ役)、映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」などのコール・ハウザー(ジミー役)ら、存在感豊かな競演陣で固めて保険をかけたのも、ブラッカイマー流の手堅いプロデュース術。
番組を企画したジェニファー・ジョンソンは過去のブラッカイマー・ドラマ「コールドケース」や、「LOST」にも参加。期待の女性クリエイターからの等身大の視点が、新たな戦うヒロイン、アニーの足を地に着かせている。
文/アメリカTVライター 池田 敏





















